ソフィアさんちのチルちゃんと僕(13)~間逆の真実⑥~

「きれいだなあ、今日は天国で天使達が祝福の歌を歌っているみたい。」

「ほんとうね。私も加わろうかしら。

だめだめ、お話の途中だというのを忘れそうになったわ。」

《「バッハの『平均律ピアノ曲集』の原題は“Das Wohltemperierte Klavier”で、パリという人が『平均律に調律されたクラヴィコード』と呼んでいるが、ドイツ語の平均律は別の言い方をするので、文字通り『良い響きに調律されたピアノ』とすべきだ」とバーバーは彼の著書に記している。・・・》

「あら!ソフィアさんが帰ってきて新しいメモを追加したわ。なんでしょう・・」

《*ジャコウアゲハを呼ぶ話

もう5-6年以上前の話です。明治大学の生田キャンパス一角にある旧日本陸軍登戸研究所を見学に行ったことがあります。

見学を終わり大学の構内をぶらりと歩いている時、10頭以上のジャコウアゲハが優雅にゆったりと風に乗り乱舞しているところに出くわしたことがありました。みると、近くの温室らしき施設の脇にはウマノスズクサがたくさん植えられていて、建物の壁には実にたくさんの蛹やその抜け殻がついており、あたりにはたくさんのチョウが舞っていました。

それから、2年ほどして思い出してその場所に行ってみると、あの感激したチョウは影も形もありません。ただ、ウマノスズクサだけが同じように繁っているだけ。そこで、近くに先生らしき方がおられてので、お話をお訊ねしました。その方が曰く、「数年前まではジャコウアゲハがたくさんいたが、誰かが幼虫や蛹を勝手に持って行ったのか、ここのところは全く姿を見なくなった。」と非常に残念そうに、「しかし、毎年ウマノスズクサは育てているので、いつかまた帰って来ることもあるでしょう。」と、おっしゃっておられたことが印象的でした。そして、今年再び訪ねたのですが、まだチョウは帰って来てはおらず、ただウマノスズクサだけが繁っていました。なかなか難しいものだと思いながら帰って来ました。

ということで、筆者も、今年から、我が家の狭いベランダですが、プランターにウマノスズクサを何株か植えているのです。この先生のように、いつかはジャコウアゲハが来てくれると信じて。

それが意外にも早く実現したことに、驚きと感激をしているところです。

(Henk)》

「あらあら、ソフィアさんが遊びに行っていた蝶おじさんのメモのようだわ。これは何年も前のメモのようだから、今頃はきっとたくさんの蝶を育てているに違いないわ。」

「そうか、だからこの頃ソフィアさんよく出かけるのかあ。僕も一緒に見に行きたいなあ」

「あら?ソフィアさんのお話はもういいの?」

「やだよ!僕、いい子だもん、だから最後までちゃんと話してよ!」

 

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